CONCEPT

飽きと知性
Against the Tiresomeness

飽きる。
辞書を引くと、「多すぎたり、同じことが長く続いたりして、いやになる」、「十分に味わったり経験したりして、それ以上欲しくなくなる」i と出てきます。
前者はただただいやになってしまい、後者は、状況にも寄りますが、ある種の満足感の、満たされた気持ちの先にある感覚、とすら受けとられます。
これを作品鑑賞に当てはめると…
十分に味わったり経験したりしていただき、作品を観ることで満たされた気持ちになっていただけたら幸いですが、それ以上欲しくなくなってしまっては困る、そんなところでしょうか。
やはり「飽きる」という言葉には、どこか淋しい、そんな印象がつきまといます。
しかし一方で、飽きることにより生まれるものがあることもまた、確かです。
今のままで良いと思っていては、何も変わりません。人は多すぎたり、同じことが長く続いたりするといやになってしまいますが、それはまさに、新しいもの、より良いものへの渇望でもあり、飽きることは創造の原動力、と大げさに言ってみることもできるのではないでしょうか。

鳳来寺山の麓には硯づくりの伝統があります。そこで聞いた、飽きるとは対照的な話、とても印象に残っていることが一つ。
「硯づくりが代々受け継がれていくことには理由がある。庭に転がしてある石は長い時間の中で割れたり欠けたりしながら、硯石に適した部分が残っていく。自分の子の世代でそれが、ようやく作品となることも。」
人的な技術の伝承のみならず、そこに石の持つ時間が確かにあり、その時間も含めて世代間、家族間で共有されてきたこと、その流れる時間の大きさに驚きを感じたことを思い出します。硯という作品の内につまっている作り手の感性。それが、そこに流れる物質の時間と長い時をかけて培われてきた素材に対する「知」、そしてそれに付随する必然的な継承に支えられているというのは、当然と言えば当然ですが、どこか新鮮なこととして感じ取られました。
作品をつくる上で避けられない、物質との対峙。
硯のような工芸作品であれば言うまでもありませんが、彫刻作品であっても同じことではないでしょうか。

彫刻
木、石、金属などに文字や絵、模様を彫り込むこと。また、木、石、金属などを彫り刻んで立体的な像につくり上げること。また、その作品。ii と出てきます。

英語では、
sculpture
the art of forming solid objects that represent a thing, person, idea, etc. out of a material such as wood, clay, metal, or stone, or an object made in this way: iii と出てきます。

そこにある感性は、物の性質、それに対する「知」と運命をともにしています。
彫刻家が感性をもって作品をつくり続ける以上、その感性の力によって彫刻の意味もまた変化していく余地を持っています。それこそ、辞書が示す概念を超える、簡単に規定されることを許さないアートの可能性として。ただ、それがもし、木、石、金属などを起点とするならば、そこに流れる物質の時間をしつこく探る、そんな知性もまた最低限必要となることでしょう。

情報、とりわけ視覚的な情報が次から次へと現れては消え、日々新しいものが登場し、「これが面白い」と思える、人の感じる心もまためまぐるしく変化していく昨今。日々飽きることの繰り返しなのかもしれません。
いいえ。冒頭に挙げた「飽きる」の意味からすれば、同じことが長く続かない、十分に味わったり経験したりできない、という点において、飽きる猶予さえもない速度の中を生きている、とさえ言えるのではないでしょうか。
いずれにしても、彫刻についてはまだまだ飽きることが許されないようです。
制作の時間は、向き合う物質の中に刻まれてきた時間とともに、物の性質やその物自体を捉える知性、そして、自分なりに何かを受け取り表現にまで高めていく、かけがえのない感性とともにあります。
知性のみによっては、作品は生まれません。
感性と素材との接点の上で、彫刻の中に表現されたもの。飽きることとはベクトルの異なる、また別の時間。視覚だけによらない、作品のあり方。
長い時の流れを感じさせる鳳来寺山の麓で、それぞれの彫刻もまた固有の時間を示します。その内に、知性を備えて。

鈴木 孝幸

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i 大辞泉(小学館)
ii 大辞泉(小学館)
iii Cambridge Learner’s Dictionary(Cambridge University Press)

ARTISTS




柄澤 健介

Kensuke Karasawa


1987 愛知県豊田市生まれ

2013 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科彫刻専攻修了


主な個展

2021

分水嶺 ( AIN SOPH DISPATCH,愛知)

2017

鏡と穴 —彫刻と写真の界面 vol,6 (gallery αM,東京)

2012

変わらぬ地平 ( Take Ninagawa,東京)


主なグループ展

2020

ARTISTS’FAIR KYOTO2020 (京都新聞ビル地下1階,京都)

2019

ART DAYS TOYOTA Toyota Specific (旧海老名三平宅,愛知)

2017

彫刻のアロンジェ ‒物理的限界を超えて (愛知県立芸術大学サテライトギャラリー,愛知)




鈴木 孝幸

Takayuki Suzuki


1982 愛知県生まれ

2007 筑波大学大学院芸術研究科修士課程総合造形分野 修了


主な個展

2021

不在の旅人 place/image ( Gallery HAM,愛知)

2017

平たい彼 place/eyes ( GALLERY MIKAWAYA,愛知)

2015

資本空間 -スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸 vol.4 鈴木孝幸 ( gallery αM,東京)


主なグループ展

2019

生きることと芸術と (旧門谷小学校,愛知)

2017

AGAIN-ST 平和の彫刻 ( NADiff Gallery,東京)

2016

新・今日の作家展2016 創造の場所-もの派から現代へ (横浜市民ギャラリー,神奈川)




名倉 達了

Tatsunori Nagurai


1984 愛知県生まれ

2011 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了

2018-19 文化庁新進芸術家海外研修制度にて英国に滞在


主な個展

2019

Traveler ( Edinburgh Sculpture Workshop,スコットランド)

2016

-Sight-見えない世界を生きてゆくために ( Gallery Coexist Tokyo,東京)


主なグループ展

2019

杜の中の文化祭-今中茶会 (明治神宮隔雲亭,東京)

2018

SICF Winners Exhibition (青山スパイラル,東京)




洞山 舞

Mai Horayama


1992 岐阜県生まれ

2020 多摩美術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了


主な個展

2021

The Iron Drawing ( Ligths Gallery ,愛知)

2019

ときのかたち (多摩美術大学 , 東京)

2018

鉄を溶かす (いりや画廊,東京)


主なグループ展

2020

春のアート展 (銀座 蔦屋書店GINZA ATRIUM ,東京)

2019

ART NAGOYA 2019 ( HOTEL NAGOYA CASTEL ,愛知)

2018

第13回大黒屋現代アート公募展 (板室温泉大黒屋 ,栃木)

ENENT


会期中のイベント


新型コロナウィルス感染症蔓延防止のため、ワークショップと9/18(土)のトークイベントは中止とさせていただきます。あしからずご了承ください。


「鳳来寺小学校ワークショップ」

地元鳳来寺小学校において、参加作家の名倉達了さんによる児童向けワークショップを開催。そこで制作した児童の作品を9/23(木)~26(日)の4日間、旧門谷小学校で展示します。

※新型コロナウィルス感染症に関わる社会情勢により中止の可能性あり。 開催の有無等詳細は展覧会ウェブサイト(http://kadoya-art.com)にてお知らせいたします。


「トークイベント」

9/18(土) 13:30~16:00 旧門谷小学校地内

◆第一部[アーティストトーク]

4名の展覧会参加アーティストから今回の作品や過去の作品にまつわるお話をお聞きします。

◆第二部[あげいんすとといっしょ]

彫刻について考えるグループAGAIN-STから石崎尚氏をゲストにお招きし、今回の展覧会についてお話を伺います。

※第一部、第二部ともに、入退出自由。途中休憩あり。タイムスケジュールなど詳細は展覧会ウェブサイト(http://kadoya-art.com)にてお知らせいたします。

ACCESS

  • 旧門谷小学校

    愛知県新城市門谷字宮下26 番地


    交通案内

    ◇車

    【新東名高速新城I.Cより】

    国道151号を約4km、長篠交差点を左折、県道32号を約7km、「鳳来寺」バス停脇の笠川駐車場より、鳳来寺山登山道方面へ徒歩5分

    【新東名高速浜松いなさI.Cより】

    国道257号を約13km、長篠交差点を右折、県道32号を約7km、「鳳来寺」バス停脇の笠川駐車場より、鳳来寺山登山道方面へ徒歩5分


    ◇電車・バス

    JR飯田線「本長篠駅」より徒歩1分の豊橋鉄道バスターミナルより「田口」行き乗車、「鳳来寺」バス停下車、鳳来寺山登山道方面へ徒歩5分

    ※バスの本数は非常に少なくなっておりますので、ご注意下さい

CONTACT

令和3年度新城市地域活動交付金事業

主催  門谷小展覧会運営委員会

後援  新城市、新城市教育委員会

お問い合わせ 門谷小展覧会運営委員会(info@kadoya-art.com

LINK

Gallery HAM

www.g-ham.com

名倉 鳳山

nagura-hozan.com