CONCEPT

2011年の6月、私は3週間ほど群馬県の中之条町に滞在していました。作品制作のために。展示場所は、何もない平らな場所。跡地。数週間の制作の日々の中、周囲の住民の方々との立ち話の中で、私はその場所の以前の姿について知ることとなります。
この辺りに校舎があって、用務員室はこっち。当時は何人くらいが通っていて、いついつ統合された。私は、給食を作っていた。
大岩第三分校跡地という名称のその場所には、今(当時)は小さな建物が一つ残されているだけ。そこは、背後にそびえる巨大な岩壁が目を引く、とても不思議な場所でした。
地面を掘って、地下に埋まっている目には見えない石を取り出して作品に使いたいんです。私のその言葉に対し、ここらの石は川から取ってきたんだ、という返答。急傾斜の上に立っていた校舎。石は牛に引っ張らせたそうです。続いて、谷側にスコップで土を盛り、斜めの土地を平らにしたこと、地域の子どもも一緒になって作業をしたことなど、当時の学校にまつわる様々な事柄が、次々と私の耳に入ってきました。そして、木造の校舎は、取り壊しの際にはその場で燃やし、その地下に埋めた、とのことでした。
周囲の環境と密接に関わりながら手を取り合って生きる人々の姿とともに、私はそこに、共同体をめぐって起こるサイクルを見たような思いでした。

生きていくために人と人とが手を取り合うこと。それはとても基本的なことです。私たちが身につけた、あるいは備わっていた、尊い力でもあります。一人の力では学校は建ちませんが、同じ目標を持った人々の集まりであれば、様々なことができる。それは、夢や希望、未来を思い描く貴重な手段とも言えるでしょう。

ただ、そのことについて手放しに賛美するだけでは、不誠実ではないでしょうか。
今は、その外側についても考えなければなりません。前述のそれは、あくまで特定の集団による夢や希望でもあるからです。外側には、考え方の異なる別の集団があるかもしれません。共同体同士の摩擦や衝突。信じるもの、価値の違いによる軋轢。情報が即座にかけ巡る時代において、後を絶たない悲劇はいくつも耳に入ってきます。一つの価値について盲目でないこと。今を生きる私たちにとって、それもまた大切なことと言えるでしょう。
また、その内側にも目をこらす必要があるのではないでしょうか。細部についても。
共同体は、個人に緩やかに強く影響を及ぼします。「私は」という主語が置換されるほど、人を規定するものでもあります。そんな中で、ある集団の求める規範や利益の裏側で、抑圧されてしまった人間がいないか、常に配慮する必要があるでしょう。全体だけが大切にされれば、個がないがしろにされる危険もあるからです。それは、巡り巡って、共同体の崩壊にもつながるのかもしれません。

さて。
ここでしたいのは、また別の話でした。
アーティストと共同体との関係はどのようなものでしょうか。

アーティストによる表現は、ほとんどの場合、個人による視点を含む、と私は考えます。それは複数人で一つの作品を制作する場合であっても、同じことでしょう。しかし、実際に彼らの表現が完全に独立した個人のものであるかと問われれば、必ずしもそうとは限りません。アーティストの背後にも、共同体の影が見え隠れするからです。
特定の考え方やものの見方。
美しさの基準もまた多様であり、それらは全ての人に共有されるものである、とは限りません。アーティストもまた、少なからず特定の価値を背負いながら生きています。それゆえ、場所が変われば作品は伝わらなくなる。反対に、伝わることだけを大切にすれば、表現が縮小する。そんなこともまた起きうることとなります。
共同体は時に、表現を分かりやすいもの、共有できるものへと留めておく、壁としての側面を合わせ持つのです。そして、時には表現の抑圧として働くこともあるかもしれません。とは言え、一度その外側に出ると、摩擦や衝突、分からなさ、作品に対する無理解や誤解が待ち受けていることもまた、確かなことです。ただ、越境を恐れれば、当然表現はみるみる小さくなっていきます。また、例え壁を超えることができたとしても、そこが新たな共同体の内部である可能性についても、言い添えておかなければいけないでしょう。
一方、内側について。特定の共同体の内部でのみ通じる話は、およそ開かれたものではありません。そこには、共同体に寄り添うことで抑圧された個人、個性があるかもしれません。それは言うまでもなく、無意識に放棄してしまったものとして。けれども、個の性だけを頼れば、それは、共同体と同じく閉じた空間を生み出し、表現もまた閉じてしまうことでしょう。
どちらも、表現の壁を内包する。構築する。その場所はとても、ジレンマに満ちていると言えるのではないでしょうか。

価値が多様化、際限なく広がっていく世界において、正しさの基準も世界の中心も揺らぐ時代において、一人の人間が特定の共同体の中を生きることは、可能なのでしょうか。
作品の中に、共同体を超えて、一人の人がいる。開かれた個人が見えてくる。そこに、アートの、アーティストの可能性を見出したいと思います。それは、複数の個人による共同の可能性を含むものであるかもしれないし、アトリエにこもる一人の開かれた個人の姿かもしれません。そして、集団の中の個のあり方を見つめ直すものであるのかもしれません。純粋な個人は、共同体をまたぐこともできるし、移動することも、見渡すこともできます。そして、作品に新鮮な価値を見出すこともまた。

2011年6月、私は10日間ほどをかけて大小6個の穴を掘りました。その穴を見た時、自然と、「これは ぼくの あなだ」 、と思いました。

鈴木 孝幸

(「あな」,谷川俊太郎 作,1983年,福音館書店 発行)より引用 

ARTISTS

大崎 土夢

Tomu Osaki


1984 福岡県生まれ

2007 宝塚造形芸術大学造形学部 卒業


個展

2015

「トーキョーワンダーウォール都庁2014」 / 東京都庁第一本庁舎(東京)

「TWS-Emerging 2015 さいしんみどうとさんしん」 / トーキョーワンダーサイト渋谷(東京)

2008

「OMOMA Subway」 / AD&A gallery(大阪)

「大﨑土夢展」 / Gallery Den(大阪)

2007

「OPEN tHE Door」 / AD&A gallery(大阪)

2005

「OPEN tHE Door」 / D&DEPARTMENT(大阪 / 東京)


グループ展

2016

「アーツ・チャレンジ2016」 / 愛知芸術文化センター(愛知)

2014

「トーキョーワンダーウォール公募2014」 / 東京都現代美術館(東京)

2013

「WONDER SEEDS 2013」 / トーキョーワンダーサイト本郷(東京)

2008

「Ignore Your Perspective 5」 / 児玉画廊(大阪)

2006

「湖族の郷アートプロジェクト」(滋賀)


受賞

2014 トーキョーワンダーウォール賞

2012 MOTブルームバーグ・パヴィリオン プロジェクト 入賞


アーカイブ

2016 「Allotment」


書籍

2018 「大﨑土夢 さんぷこう(散布考)」

織田 真二

Shinji Oda


1981 岡山県生まれ、愛知県育ち

2009 愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画・版画領域 修了


主な個展

2017 「個展」 / GALLERY MIKAWAYA(愛知)

2016 「個展」 / GALLERY MIKAWAYA(愛知)


主なグループ展

2017

「場/BA」 / 愛知県美術館ギャラリーJ室(愛知)

「いくつかの岐路 -所有について」 / 旧門谷小学校(愛知)

「第12回 大黒屋現代アート公募展」 / 板室温泉大黒屋(栃木)

2016

「都市木ギャラリー」 / 長者町会場(愛知)

2015

「Pre-open exhibition」 / GALLERY MIKAWAYA(愛知)

「亀崎せこみち展2015」 / 愛知県半田市亀崎町一帯(愛知)

「繋留2」 / 愛知県立芸術大学サテライトギャラリー(愛知)

「美濃加茂Annual 2015」 / みのかも文化の森野外敷地内(岐阜)

2014

「亀崎せこみち展2014」 / 愛知県半田市亀崎町一帯(愛知)

2013

「繋留」 / 豊田市美術館市民ギャラリー9(愛知)

「かめざき小路てん 2013」 / 愛知県半田市亀崎町一帯(愛知)

「HAP at altien」 / 太田川駅前 暮らしの広場:aitien(愛知)

「文化の森ギャラリー 2013」 / みのかも文化の森敷地内野外(岐阜)

川 原 卓 也

Takuya Kawahara


2010 筑波大学博士前期課程人間総合科学研究科芸術専攻ビジュアルデザイン領域 修了

2012 四谷アート・ステュディウム 在籍(〜2013)

2014 Post Studium 会員(〜2017)


主な展覧会、公演

2017

「PJB」 / BankART Studio NYK(横浜)

2016

「ピンク・ジェリー・ビーンズ」 / TABULAE(東京)

2014

「粘土と鏡」 / float f(gallery)(東京)

2013 

「出張blanClass@森美術館 |from Student night」 / 森美術館(東京)

「あらかじめ準備されていた事柄、なれど──The act of taking something through a set of prescribed procedures」 / GALLERY OBJECTIVE CORRELATIVE(東京)

鈴木 淳夫

Atsuo Suzuki


1977 愛知県生まれ

2001 静岡大学大学院教育学研究科 修了


主な個展

2018 

「彫る絵画」 / マリーギャラリー(東京)(’17、’16、’14、’13、’12、’11)

「彫る絵画」 / ギャラリーコヅカ(愛知)(2003~)

「鈴木淳夫展」 / 平八郎ミュージアム(豊川)

2010

喫茶フォルム(愛知)(’05、’03)

2006

豊田市美術館ギャラリー展示室9(愛知)


主なグループ展

2017

「いくつかの岐路 -所有について」 / 旧門谷小学校(愛知)

2015

「現代美術」展 / ギャラリーサンセリテ(愛知)

「豊穣なるもの−現代美術in豊川」 / 桜ヶ丘ミュージアム(愛知)

「遠州横須賀街道ちっちゃな文化展」 / (静岡)(’14、’13、’12)

2014

「静岡の系譜–80年代から現代まで」 / gallery udonosu(静岡)

2013

「『春』を感じる6人の新進アーティスト作品展」 / ミッドランドスクエア(愛知)

2011

「表現された人物像」 / 安城市民ギャラリー(愛知)


受賞

2004 豊田トリエンナーレ準大賞

2003 GEISAI museum 銀賞

鈴木 孝幸

Takayuki Suzuki


1982 愛知県生まれ

2007 筑波大学大学院芸術研究科修士課程総合造形分野 修了


主な個展

2018

「平たい彼 place/eyes」 / GALLERY MIKAWAYA(愛知)

2017 

「僕のいるとこ place/dot」 / Gallery HAM(愛知)

「川をさかのぼるいし place/leg」 / 板室温泉大黒屋サロン(栃木)

2016

「地図の中の穴 place/breath」 / Gallery HAM(愛知)

2015

「資本空間 -スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸 vol.4 鈴木孝幸」 / gallery αM(東京)


主なグループ展

2017

「いくつかの岐路 -所有について」 / 旧門谷小学校(愛知)

「AGAIN-ST 平和の彫刻」 / NADiff Gallery(東京)

2016

「新・今日の作家展2016 創造の場所-もの派から現代へ」 / 横浜市民ギャラリー(神奈川)

「そこにあるもの(こと)/そこにないもの(こと)」 / 旧門谷小学校(愛知)

「アーツチャレンジ2016」 / 愛知芸術文化センター(愛知)

2015

「中之条ビエンナーレ2015」 / (群馬)(’13、’11、’09も参加)

「豊穣なるもの-現代美術in豊川」 / 豊川市桜ヶ丘ミュージアム他(愛知)

2014

「4th Exhibition AGAIN-ST 置物は彫刻か?」 / 東北芸術工科大学(山形)

「中之条/名古屋」 / Gallery HAM(愛知)


受賞

2009 第4回大黒屋現代アート公募展大賞受賞

福永 恵美

Megumi Fukunaga


1981 滋賀県生まれ

2004 愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻 卒業

2006 愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画専攻 修了


個展

2013

「白き姿に時を憶う」 / 豊田市美術館地内 又日亭(愛知)

「残されたもの」 / 愛知県立芸術大学サテライトギャラリー(愛知)

2010

「皮膜」 / 名古屋市市政資料館(愛知)


主なグループ展

2017

「民家で生け花を」 / 豊田市中条邸、参合館(愛知)

2016

「創立50周年記念展示 芸術は森から始まる」 / 愛知県立芸術大学(愛知)

2013

「藤沢アートハウス 2周年記念展」 / 愛知県立芸術大学藤沢アートハウス(愛知)

「さわらないでください!?」 / 豊田市美術館(愛知)

2012

「カルペ・ディエム 花として今日を生きる」 / 豊田市美術館(愛知)

2007

「fresh 2007」 / 伊勢現代美術館(三重)


ワークショップ「蝋の花」

2017

豊田市中条邸(愛知)

2014

三の倉市民の里地球村(岐阜)

2013

豊田市美術館地内 又日亭(愛知)

愛知県立芸術大学藤沢アートハウス(愛知)

山口 諒

Ryo Yamaguchi

1990 長野県生まれ

2016 名古屋芸術大学大学院美術研究科美術専攻同時代表現研究 修了

現在 愛知県在住


展示・上映歴

2018

「drop by the loop」 / オアシス21 店舗14区画(愛知)

2017

「いくつかの岐路 -所有について」 / 旧門谷小学校(愛知)

「Sky Over 4」 / アートラボあいち(愛知)

2016

「そこにあるもの(こと)/そこにないもの(こと)」 / 旧門谷小学校(愛知)

「Focus Flowing」 / gallery MoMo(東京)

「アーツ・チャレンジ2016」 / 愛知芸術文化センター(愛知)

2015

「Traffic Site 名古屋芸術大学同時代表現研究×東京藝術大学先端芸術表現科 交流展」 / 名古屋芸術大学 Art & Design Center(愛知)

2013

「あいち卒展コレクティブ」 / アートラボあいち(愛知)

「境界線のptのはば」 / TRANSIT GALLERY(愛知)

2012

「沈黙の彼女」 / 名古屋芸術大学 Art & Design Center(愛知)

「単純な多面」 / MATSUO MEGUMI VOICE +GALLERY pfs/w(京都)

2011

イメージ・フォーラム提携企画「映像の学校Ⅱ」 / 愛知芸術文化センター(愛知)

2010

「旧加藤邸アートプロジェクト 2010」 / 旧加藤邸(愛知)

大和 由佳

Yuka Yamato

http://yamatoyuka.com/

愛知県生まれ 埼玉県在住


主な個展

2018

「軸/杖/茎」 / Gallery HAM(愛知)

2015

「発話を忘れて <カザルスと母の巣箱>」 / Gallery HAM(愛知)

2014

「第三回新鋭作家展・回游する線上で」 / 川口市立アートギャラリー・アトリア(埼玉)

「柄、杖先、新しい小径」 / 同時代ギャラリー(京都)

2010

「未踏の土地へ」 / ニュートロン東京(東京)

2006

「地上の鳥」 / INAXギャラリー(東京)


主なグループ展

2017

「いくつかの岐路 -所有について」 / 旧門谷小学校(愛知)

「スクワチナ・スクワチナ」 / Para Hotel / 旧白井屋ホテル(群馬)

2016

「地下光学」 / アートスタジオDungeon(東京)

「そこにあるもの(こと)/そこにないもの(こと)」 / 旧門谷小学校(愛知)

「ここにもアートかわぐち」 / 川口市立映像・情報メディアセンター メディアセブン(埼玉)

2015

「DMZ Pilgrimage」 / South Korea DMZ Peace- Life Hill 他(韓国)

「見ることのかたわら」 / 旧門谷小学校(愛知)

2014

「COLLECTING TIME」 / Espace Cheminée Nord(スイス)

「中之条/名古屋」 / Gallery HAM(愛知)

2013

「中之条ビエンナーレ」 / 丸伊木材(群馬)(’11、’09 も参加)

2012

「BIWAKOビエンナーレ」 / 旧中村邸(滋賀)

ENENT


◇周辺校児童によるワークショップ作品の展示

8名のアーティストの作品に加え、ワークショップで制作した周辺校児童の作品も展示


◇ギャラリーツアー

9/8(土)16:00~16:40

アーティストによる解説を聞きながら作品鑑賞


◇オープニングレセプション

9/8(土)17:00~19:00


◇アーティストトーク

9/30(日)13:00~16:00

旧門谷小学校のランチルームにてアーティスト自身による作品にまつわる話を聞きます。

進行 愛知県美術館学芸員 石崎 尚 氏


※その他イベントやトークのタイムスケジュールなどは、決定次第当サイトにてお知らせ

ACCESS

  • 旧門谷小学校

    愛知県新城市門谷字宮下26 番地


    交通案内

    ◇車

    【新東名高速新城I.Cより】

    国道151号を約4km、長篠交差点を左折、県道32号を約7km、「鳳来寺」バス停脇の笠川駐車場より、鳳来寺山登山道方面へ徒歩5分

    【新東名高速浜松いなさI.Cより】

    国道257号を約13km、長篠交差点を右折、県道32号を約7km、「鳳来寺」バス停脇の笠川駐車場より、鳳来寺山登山道方面へ徒歩5分


    ◇電車・バス

    JR飯田線「本長篠駅」より徒歩1分の豊橋鉄道バスターミナルより「田口」行き乗車、「鳳来寺」バス停下車、鳳来寺山登山道方面へ徒歩5分

    ※バスの本数は非常に少なくなっておりますので、ご注意下さい

CONTACT

門谷小展覧会運営委員会

MAIL:info@kadoya-art.com

主催 : 門谷小展覧会運営委員会

後援 : 新城市、新城市教育委員会

LINK

Gallery HAM

www.g-ham.com

cafe爾今

nicon.blog.shinobi.jp/

名倉 鳳山

nagura-hozan.com