飽きと知性
Against the Tiresomeness
2021年9月4日(土) -9月26日(日)
柄澤健介 鈴木孝幸 名倉達了 洞山舞
飽きる。
辞書を引くと、「多すぎたり、同じことが長く続いたりして、いやになる」、「十分に味わったり経験したりして、それ以上欲しくなくなる」と出てきます。
前者はただただいやになってしまい、後者は、状況にも寄りますが、ある種の満足感の、満たされた気持ちの先にある感覚、とすら受けとられます。
これを作品鑑賞に当てはめると…
十分に味わったり経験したりしていただき、作品を観ることで満たされた気持ちになっていただけたら幸いですが、それ以上欲しくなくなってしまっては困る、そんなところでしょうか。
やはり「飽きる」という言葉には、どこか淋しい、そんな印象がつきまといます。
しかし一方で、飽きることにより生まれるものがあることもまた、確かです。
今のままで良いと思っていては、何も変わりません。人は多すぎたり、同じことが長く続いたりするといやになってしまいますが、それはまさに、新しいもの、より良いものへの渇望でもあり、飽きることは創造の原動力、と大げさに言ってみることもできるのではないでしょうか。
鳳来寺山の麓には硯づくりの伝統があります。そこで聞いた、飽きるとは対照的な話、とても印象に残っていることが一つ。
「硯づくりが代々受け継がれていくことには理由がある。庭に転がしてある石は長い時間の中で割れたり欠けたりしながら、硯石に適した部分が残っていく。自分の子の世代でそれが、ようやく作品となることも。」
人的な技術の伝承のみならず、そこに石の持つ時間が確かにあり、その時間も含めて世代間、家族間で共有されてきたこと、その流れる時間の大きさに驚きを感じたことを思い出します。硯という作品の内につまっている作り手の感性。それが、そこに流れる物質の時間と長い時をかけて培われてきた素材に対する「知」、そしてそれに付随する必然的な継承に支えられているというのは、当然と言えば当然ですが、どこか新鮮なこととして感じ取られました。
作品をつくる上で避けられない、物質との対峙。
硯のような工芸作品であれば言うまでもありませんが、彫刻作品であっても同じことではないでしょうか。
彫刻
木、石、金属などに文字や絵、模様を彫り込むこと。また、木、石、金属などを彫り刻んで立体的な像につくり上げること。また、その作品。 英語では、
sculpture
the art of forming solid objects that represent a thing, person, idea, etc. out of a material such as wood, clay, metal, or stone, or an object made in this way:
そこにある感性は、物の性質、それに対する「知」と運命をともにしています。
彫刻家が感性をもって作品をつくり続ける以上、その感性の力によって彫刻の意味もまた変化していく余地を持っています。それこそ、辞書が示す概念を超える、簡単に規定されることを許さないアートの可能性として。ただ、それがもし、木、石、金属などを起点とするならば、そこに流れる物質の時間をしつこく探る、そんな知性もまた最低限必要となることでしょう。
情報、とりわけ視覚的な情報が次から次へと現れては消え、日々新しいものが登場し、「これが面白い」と思える、人の感じる心もまためまぐるしく変化していく昨今。日々飽きることの繰り返しなのかもしれません。
いいえ。冒頭に挙げた「飽きる」の意味からすれば、同じことが長く続かない、十分に味わったり経験したりできない、という点において、飽きる猶予さえもない速度の中を生きている、とさえ言えるのではないでしょうか。
いずれにしても、彫刻についてはまだまだ飽きることが許されないようです。
制作の時間は、向き合う物質の中に刻まれてきた時間とともに、物の性質やその物自体を捉える知性、そして、自分なりに何かを受け取り表現にまで高めていく、かけがえのない感性とともにあります。
知性のみによっては、作品は生まれません。
感性と素材との接点の上で、彫刻の中に表現されたもの。飽きることとはベクトルの異なる、また別の時間。視覚だけによらない、作品のあり方。
長い時の流れを感じさせる鳳来寺山の麓で、それぞれの彫刻もまた固有の時間を示します。その内に、知性を備えて。
鈴木 孝幸
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柄澤 健介
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鈴木 孝幸
「災害を彫刻する place / wall」(部分) / 2021年 / 石、海綿、植物、鉄、ワイヤー、金具、ビン、雨水、土、防水シート、ロープ、コンクリートブロック、ヘルメット、モルタル、アクリル板、写真、映像、各種データ、参考資料等 協力 新城市内60代男性、新城市内50代男性、建設工事業50代男性、北設楽郡稲武町(現豊田市)出身30代男性、50代女性
鈴木 孝幸
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鈴木 孝幸
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「海の⾒える場所」 / 2015-2021年 / 大理石
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「砂塵の彼方−海底から吹く風」 / 2020-2021年 / 大理石、木製オール、大理石の粉、塗料
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2021年 展示風景
名倉 達了
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洞山 舞
「 Phase of the moon - 月満つれば則ち虧く」 / 2021年 / 鉄、石
洞山 舞
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「みずのつき」 / 2021年 / 金糸、美濃和紙、竹
洞山 舞
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洞山 舞
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洞山 舞
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洞山 舞
「寂_5」 / 2021年 / 純金箔、金糸、錆、鉄粉、美濃和紙